Archive for the ‘Movie’ Category

『別離』

Posted by Obrien On 5月 - 11 - 2012

地味に大ヒット中の、アカデミー賞外国語映画賞を獲ったイラン映画『別離』を観ました。この映画、昨年の「アジアフォーカス福岡国際映画祭」で別タイトルで上映していたんですね。さすが福岡。先見の明あり。
 思春期の娘の将来を案じ海外移住したい妻と、認知症の父親の介護のためにイランに残りたい夫。ゆえに離婚するか否かの瀬戸際にある「夫婦A」。夫が失業したために、幼い娘を抱え、かつ身重でありながら、妻が出奔した「夫婦A」の家に夫に内緒で家政婦の職を見つけた妻。これが「夫婦B」。「妻B」が仕事中に内緒で外出したことに激昂した「夫A」が、「妻B」を突き飛ばして転倒。その後「妻B」が流産した――「事件」。
 イランにおける夫婦の離婚問題、老人介護、教育問題、生活水準の格差、信仰の個人差――。世界のあらゆる場所で起こっていることと共通する問題に、イラン特有の事情を加味した設定と、その中で起こるごく小さな「事件」。それでも、イランでは妊娠19週目以降の流産は“殺人”とみなされるという事実も手伝って、「事件」は「大事件」に発展し、同時に物語は極上のサスペンスの様を呈してきます。
 アスガー・ファルハディ監督の前作『彼女の消えた浜辺』も観ていますが、なるほど彼は、イラン映画では珍しいサスペンス描写に長けた監督。登場人物たちがつく嘘と、その背後にある真実、それを“目で語らせる”演出、伏線の張り方――素晴らしい出来栄え。感服しちゃいました。

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Category: Movie

『おとなのけんか』

Posted by Obrien On 5月 - 9 - 2012

少し前に観ていたロマン・ポランスキーの異色作『おとなのけんか』。芸達者、口達者な4人のキャストの口喧嘩が楽しい一作でした。
ヴァルツ&ウィンスレット、ライリー&フォスターの二組の夫婦の“話し合い”の原因は、どうやら子供のケンカにあるよう。やがて、ひとつのケンカの火種が、別のケンカを呼び……、昨日の友は今日の敵というように、テーマが変われば攻撃の矛先も変わり、何か国際情勢を風刺しているようで――は勘ぐりすぎかな?本来、穏やかな賢者であるはずの4人がエゴをむき出しにするところがコメディとして面白いわけですが、中盤、あるひとりがゲロをしたあたりから、少し常軌を外れてしまった感もあり。
 結局のところ、子供のケンカに大人が介入してややこしくするより、子供同士に任せておいた方がコトは丸く収まる、という結論かな。この映画を見る限り、洋の東西を問わず、そうみたい。
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Category: Movie

『星の旅人たち』

Posted by Obrien On 4月 - 30 - 2012

エミリオ・エステベスが監督し、その父親マーティン・シーンが主演した『星の旅人たち』をいち早く鑑賞。
 サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼の旅は、年を追うごとに参加者を増やしていると聞きます。800キロ、それも舗装路ではなくアップダウンもある道のりを歩き通すわけですから、なかなか大変な巡礼。それでも人気が出ているのは、観光としての誘致が活発だから?この道程を描いた映画といえば、ルイス・ブニュエルの『銀河』、コリーヌ・セローの『サン・ジャックへの道』を思いだしますが、さすがに前者は観ておりません。四国八十八カ所などと違って、巡礼者に悲壮感が漂うことはなく、いろんな国の、いろんな出自を持ったいろんな年頃の男女が、いろんな理由から自分に高いハードルを課す旅ですから、キャラクター造形がしやすく、物語になりやすいですね。
 本作は、息子がその道中に客死した事を知った父親が、生前、心から理解し合えなかった息子の遺志をくみ取るように、”旅”を引き継ぐ物語。エミリオ・エステベスとマーティン・シーンの実際の関係を想像し、重ねながら観ないわけにはいかない作品でした。
 80年代にエステベスのファンだった私にとっていまだに彼は『セント・エルモス・ファイヤー』で年上の女性に思いを寄せる純朴青年のまま。優等生で、きっと親思い。そんなイメージ。老境の父親に良い役を与えました。親孝行ですね。

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Category: Movie

『家族の庭』

Posted by Obrien On 4月 - 25 - 2012

手垢のついた表現であることは承知の上ですが、「しみじみと良い」という賛辞がいちばんしっくりくるのがマイク・リー監督作。現時点での公開最新作『家族の庭』もそう。やっと観れました。
 マイク・リーの作品で一貫しているのは、イギリスの市井の人々の喜悲劇。喜悲劇とは、すなわち人生そのもの。今作の主人公は、ごく普通の老夫婦(ジム・ブロードベント&ルース・シーン)です。ふたりの家に集まる近所の住人、旧友たち、仕事仲間、そして息子とその彼女。彼らそれぞれに物語があり、もちろんそこでは彼らが主人公であり……。老夫婦を中心に置きつつも登場人物ひとりひとりに寄り添いながら、皆のストーリー(背景)を観ている我々に想像させ、感情移入させていくことを130分ほどの時間でやってのけるマイク・リーの作劇術に感服です。
 さて、マイク・リーの作品を観るたびに思うこと、それは、「どいつもこいつも冴えない顔立ちなのに、みんな巧ぇなー」。だいたいいつも“マイク・リー組”と言える常連俳優を配役する彼ですが、その誰もが芸達者!イギリスには、詳しくは知らないけど上手い俳優がこんなにいる!――それまで一般的には無名だったと言えるブレンダ・ブレシンが『秘密と嘘』で、イメルダ・スタウントンが『ヴェラ・ドレイク』でオスカーにノミネートされたことが、それを物語っていると言えないでしょうか。

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Category: Movie

『ドライヴ』

Posted by Obrien On 4月 - 17 - 2012

週末は、ハリウッドの新星テイラー・キッチュの主演作が同日に2本公開だったようですが、去る3月31日は、ライアン・ゴズリング主演作が同時公開だったんですね。その片方『ドライヴ』は、昨年のカンヌで監督賞に輝いたことも頷けるクールな一本でした。
 光と影の演出、静謐さとバイオレンス、サウンドと音楽(挿入曲)のセンスの良さ、死に方(殺し方)のヴァリエーションetc――コーエン兄弟、はたまた北野武作品に通じる何かを感じます。
 ライアン・ゴズリングのミステリアスなカッコよさ、キャリー・マリガンの少女のような可愛さが際立っていることはもちろん、いつの間にか、かつてのジェームズ・カーンのような貫禄が出たアルバート・ブルックスと、怪人ロン・パールマンの悪役ふたりが存在感たっぷりなのは、ちょっとこだわりの“嬉しポイント”。

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Category: Movie

ここ数年、私のご贔屓俳優といえばライアン・ゴズリング。近作『ブルー・バレンタイン』や、この『スーパー・チューズデー 正義を売った日』を観れば、オスカーに最も近い若手俳優の一人という評価は頷けるもの。もっとも数年前、ヤク中の教師を演じた『Half Nelson』(日本未公開)で主演男優賞にノミネートされていますが……。
 そういえば、『きみに読む物語』や『ラースと、その彼女』あたりまでは、穏やかな表情の優男のイメージが強かった彼でしたが、近作では明らかに変わってきました。
 若くして政治の世界に飛び込み、大統領選で民主党候補者の若き広報官を演じた『スーパー・チューズデー 正義を売った日』。オープニングの、理想に燃える偽らざる正義漢然とした好青年ぶりから、選挙戦の下衆なダークサイドを経験した後の、終末近くの狡猾な顔つきへの変化に驚きました。穏やかな笑顔の裏の鋭い狂気とでも言いましょうか……。そんなゴズリングと対照的に、怒りを表情に表わさず、弾力性で包み込むようなフィリップ・シーモア・ホフマンも素晴らしいです。
 ジョージ・クルーニーはこれから、歳をとるにつれイーストウッドのように監督業にシフトしていくんでしょうか?クライマックスの、二転三転“立場逆転”の演出は「クール!!」のひと言。その題材選びや演出術を見るにつけ、やがてクルーニーは、シドニー・ルメットの正統的後継者になるような気がするのですが、いかがでしょう?

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Category: Movie

『僕達急行 A列車で行こう』

Posted by Obrien On 4月 - 9 - 2012

映画、鉄道、競馬、貝etc…。いずれも、その道を極めた人の足元に及ばないまでも、私は“おたく”と呼ばれて、何も嫌な気はしません。森田芳光監督の遺作となった『僕達急行 A列車で行こう』は、彼自身がそうであった、“おたく”への愛情に満ちた一作でした。登場人物がすべて列車の名前、ご都合主義ともとれる展開、不思議な効果音など、森田監督流の“お遊び”に溢れたこだわりの一作。好き嫌いは分かれそうですが。
 主人公はふたり。小町くん(松山ケンイチ)は土地開発業社のサラリーマンで、小玉くん(瑛太)は小さな町工場の二代目。二人とも無類の鉄道好きだけど、自分の立ち位置を分かっているし、自身を客観視できる若者です。脇役まで漫画ちっくなキャラクターで占められた映画の中にあって、決して自閉症気味の変人として“鉄道おたく”を描いていません。そこがまず気に入りました。
「芸は身を助く」じゃないですが、仕事抜きに釣り好き同士で関係を構築し、ビッグな仕事を引っぱってくる浜ちゃんよろしく、小町くん、小玉くんと福岡の会社社長(ピエールさん!)の趣味でつながった同好の士の絆が、何よりも堅固であるというメッセージが嬉しいですね。一種のファンタジーであることは分かっていても、そうであってほしいと思います。おたくの端くれとして。

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Category: Movie

『SHAME-シェイム-』

Posted by Obrien On 4月 - 6 - 2012

セックス依存症と聞くと、すぐに何人かの俳優やセレブの名前が浮かびます。れっきとした病気であることは分かっていても、同情をあまり感じないのはなぜでしょう?
『SHAME/シェイム』の主人公は、まさにそういう設定。ナンパや娼婦相手のセックスから、雑誌、WEBサイトを見ての自家発電まで、寝ても覚めても頭の中はセックスのことばかり。なのに、愛のあるセックスは出来ない――。そこに、愛に奔放なのか臆病なのか不安定な妹が絡んできます。過去に、この兄妹に何があったか明示されることはありませんが、観る側は勝手に想像しながらヤキモキさせられる――という寸法。
 一条の希望が射しこんだと理解できなくはないけれど、答えを見いだせないまま終幕を迎えるこの映画に最後まで息苦しさを拭えなかったのは、自罰、自傷のように思える主人公の性行為ゆえでしょうか。
 クリスチャン・ベイルが主演した『アメリカン・サイコ』を思いだしました。

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Category: Movie

『TIME/タイム』

Posted by Obrien On 4月 - 2 - 2012

「時は金なり」――社会人になって以降、じわじわと認識するようになってきた感覚です。生産する=お金を生むためには、時間は不可欠――となれば、まさに「時は金」。では文字通り「通貨が時間だったら」という空想の世界はどうか、と考えると、これにはぞっとしますね。時間を使い果たせば、それは死を意味します。
『TIME/タイム』で描かれる世界では人間の成長は25歳でストップし、その時点で余命23時間が残され、カウントダウンが始まる。ただし、時間の譲り合い(奪い合い)は可能。その後の寿命は持てる富=時間によって決まる、ということになります。つまり“持たざる者”の寿命は23時間であるのに対し、富裕層の寿命はほぼ永遠というわけ。
 そんなわけで『TIME/タイム』は、アンドリュー・ニコル監督によって作り上げられた、そんな箱庭的仮想世界の無菌室感を楽しむ作品です。キリアン・マーフィーの哀しそうな澄んだ瞳がそれを助長し、今ひっぱりだこのアマンダ・セイフライドのアンドロイド的な姿も効果的です。ですが、ハイヒールを履いて全力疾走ができない(!)ことは、男の私でも分かります(笑)。

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Category: Movie

『ファミリー・ツリー』

Posted by Obrien On 3月 - 29 - 2012

アレクサンダー・ペイン監督の新作と聞けば、ワクワクせずにはいられません。『サイドウェイズ』以来ですから、7年ぶりですか。寡作な人ですね。監督作は4本ですが、これまでハズレはありません。それでも7年のブランクは長すぎるなあ。ウディ・アレンのように毎年、とまでは言いませんが、せめてもう少し……。
 突然の事故で妻がこん睡状態に陥ったため、二人の娘と向き合わなくてはならなくなり、さらに、その妻が浮気をしていたことが発覚、その相手には現実をどう伝えるべきか悩み、折しも、相続することになっている先祖代々の土地の売却問題が浮上し――と難題が一気に押し寄せ、右往左往する中年男がジョージ・クルーニー。歳をとってもカッコイイことには違いないけど、おかしみがにじみ出ている本作の主人公は、間違いなくハマリ役です。アロハやTシャツ姿でもサマになる、こんな中年になりたいもんですね。

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Category: Movie