地味に大ヒット中の、アカデミー賞外国語映画賞を獲ったイラン映画『別離』を観ました。この映画、昨年の「アジアフォーカス福岡国際映画祭」で別タイトルで上映していたんですね。さすが福岡。先見の明あり。
思春期の娘の将来を案じ海外移住したい妻と、認知症の父親の介護のためにイランに残りたい夫。ゆえに離婚するか否かの瀬戸際にある「夫婦A」。夫が失業したために、幼い娘を抱え、かつ身重でありながら、妻が出奔した「夫婦A」の家に夫に内緒で家政婦の職を見つけた妻。これが「夫婦B」。「妻B」が仕事中に内緒で外出したことに激昂した「夫A」が、「妻B」を突き飛ばして転倒。その後「妻B」が流産した――「事件」。
イランにおける夫婦の離婚問題、老人介護、教育問題、生活水準の格差、信仰の個人差――。世界のあらゆる場所で起こっていることと共通する問題に、イラン特有の事情を加味した設定と、その中で起こるごく小さな「事件」。それでも、イランでは妊娠19週目以降の流産は“殺人”とみなされるという事実も手伝って、「事件」は「大事件」に発展し、同時に物語は極上のサスペンスの様を呈してきます。
アスガー・ファルハディ監督の前作『彼女の消えた浜辺』も観ていますが、なるほど彼は、イラン映画では珍しいサスペンス描写に長けた監督。登場人物たちがつく嘘と、その背後にある真実、それを“目で語らせる”演出、伏線の張り方――素晴らしい出来栄え。感服しちゃいました。









